コーク・インダストリーズと社員の輝かしい成功は、実証されている人類の進歩の原則に必ず根差すものです。相互利益、比較優位、創造的破壊といった原則をより良く理解し実践することで他者により多くの利益をもたらし、より多くの繁栄を遂げることに成功しています。これは60年近くに渡り実証していることで、私たちの将来の成功のためにはさらに能力を向上していく必要があります。本冊子は、会社、私たち自身、そして私たちに関係するすべての人々の利益のために、私たち一人ひとりがこの原則をより良く理解し実践するのに役立てるために用意しました。
そのため、今回のメッセージは実証されている原則の重要性についての紹介というよりも再確認を求める内容としています。私たち全員が将来に向けてこれらをより一層活用するためには、過去どのように私たちを成功に導いたかを理解する必要があります。前回2018年にコークのビジョンとフレームワークを更新したときと同様、今回の更新も原則へのフォーカスを強化する必要があると考えました。
まず、考えてみましょう。
10年以上前、長年にわたる好業績ののち自分たちが立ち遅れかけていることに気づき始めました。新たな能力の構築が追いつかず、投資のほとんどが期待通りの成果を得ることができず、それが故に収益力が弱まっていました。そこで、さまざまな問題に取り組み始めたのですが、経営手法をほとんど変えずに過去と似通った対策を行うだけでは小さな改善程度しか達成することができませんでした。
5年ほど前、業績を抜本的に変えるには私たち自らの変革が必要であり、まずは私たちシニアマネジメントの変革から始めなければならないという結論に至りました。人類の進歩の原則をまったく新たな水準で実践することが必要になったのです。よって2017年、より効果的な「改善や進展を推進する」ことを目的に「リーダーシップの重要な変更」と称し、比較優位を用いたシニアリーダーシップ層の責任の分配と再配置を行いました。
そしてその翌年、コークのビジョンと私たちの価値観（以前は基本理念）を大幅に改訂しました。ほとんどの社員にとって、相互利益という好循環、好まれるパートナー、（継続的な改善ではなく）継続的な変革、自己実現、そしてスチュワードシップという概念に触れたのはこのときが初めてでした。その後間もなく向い風と追い風の重要性を紹介しました。これら全てがコーク全体の変革を加速する鍵となったのです。
当社すべてのビジネスがこの変更に基づき迅速に行動し変革に取り組み、またコークの各部門と所属する数えきれない社員の皆さんも同様に取り組んでくださったことに私は嬉しく思っています。これらの変革すべてが利益の増加という形での記録的業績の実現、新たな能力の構築、将来のビジネス機会の拡大へとつながったのです。
この変革のプロセスに終わりはありません。もし変革を止めてしまえば、創造的破壊の力は衰退しエントロピーにより打ちのめされ失敗に終わることでしょう。しかし、私たち自らが人類の進歩の原則を理解し実践することに注力し自身や所属する組織の変革を続けていくことで、より多くを達成し想像を遥かに超える生活の向上を実現できるのです。
そのために過去5年間に実現した改善の教訓から、改めてフレームワークを修正し、新たな名前を付けました。プリンシプル・ベースト・マネジメント (Principle Based Management™) です。同じ狙いでコークのビジョンも更新しました。
原則（プリンシプル）を一層強調することで、私たちのフレームワークがより効果的に社員に力を注ぎ、機会を捉え、理想と現実のかい離を埋め、向い風と追い風に取り組むことができることと信じています。またコークの外部の人々が、私たちが取り組むことの理由や方法を理解するのにも役立つでしょう。
この冊子にて今回の変更について記載しているほか、原則をどこでどのような形で実践し業績を向上してきたかを引き続きストーリーとして紹介します。当社の各ビジネス、支援部門、投資、そしてコーク全社の社員がいかにこの力を用いて変革を遂げてきたのかを理解していただけるでしょう。
皆さんがどこまで自己実現を果たせるかが、これらの取り組みの成功を測る最も重要な尺度となります。私の目標は、皆さん自身がより十分に能力を開発し才能を適用し情熱を注ぐことで潜在能力を発揮し、コークの長期的な成功への貢献を最大化することです。
言い換えれば、人は、なりうるすべてのものになって欲しい ということです。これは単なる成功への鍵ではなく、意味のある人生への鍵なのです。
Charles Koch
